報道されていない中国の真実と実態とは?

数年前から日中関係がぎくしゃくしています。

 

yjimage

 

筆者は中国で長らく仕事をして来た関係上、とても憂慮しています。

現在の両国の政権それぞれが、リベラルな考え方を持ち合わせていないことが一番の原因です。
特に日本においては、マスメディアで報道される中国が、偏っている様に感じます。
その事から多くの日本人の意識に、嫌中国観が醸成されていると感じます。
多くの報道を簡単にカテゴライズしてみると、
・領土問題
・反日
・爆買い
・偽物(コピー)
・とんでもない事件
などが多く目につく事柄です。

長年中国在住経験者として申し上げると、これは一面的な報道を言わざるを得ないのです。
政治環境は、共産主義と自由主義ですから、体制が全く違うので、
ある程度際立たせる報道は致し方無いでしょう。

しかし、社会面で見た時には、日本のマスメディアの中に、
潜在的に上から目線でセンセーショナルな現象を報道しようとする意図を感じるのです。
市井の中国の事が余りに報道されていないと感じるのです。
そこで、筆者の目から見た、普通の中国をご紹介してみたいと思います。

中国の多くの一般市民は、政治に目をつむって生活しています。
自由主義の日本では考えられない事ですが、
中国は共産主義国家なので、自由に物を言えないからなのです。

選挙制度がありませんから、政治家を選ぶこともできません。

短期の旅行で中国を訪れた事のある方は少なくないと思いますが、
大都市への数日の滞在ではその事がわかりにくいはずなんです。
上海や広州など、大都市であれば、東京と変わらない様に表面的には見える筈です。

高層ビルが立ち並び、渋滞する程に車に溢れ、市民のいでたちも日本と変わらない様に見えると思います。
自由主義国家である日本と何が違うのか、わからないと思います。
共産主義の概念を掘り下げて語る事はここでは致しません。
が、わかりやすく言えば、現代中国の共産主義というのは中国共産党一党独裁国家という事です。
北朝鮮と違って一人の独裁者が司る国家ではありませんが、政党は中国共産党しか無い国なんです。

しかも、国家の上に共産党がある仕組みなんです。
日本で国家の上に自民党や民進党はありませんよね。ところが中国は、国家よりも共産党が上なんです。
一党独裁政治ですから、批判勢力がいません。批判される事が無いのです。
こういう仕組みからも、自由主義国家とはまるで違うという事がおわかり頂けると思います。

しかし、それは短期滞在ではなかなかわかり得ない事なんです。
筆者は中国の大都市に駐在していましたので、いわゆる地方農村部の事は詳しく語れません。
ここでは都市部の実情としてお話致します。
普通の中国の人たちの生活は、簡単に言えば我々現代日本人と余り変わりません。
学校では詰め込み教育、大学受験、企業に就職して、家を買い、高齢化している両親の行く末を心配し、
時には海外旅行もしたいなーなんて考えて日々暮しているのです。
ですから、尖閣諸島問題やら、南沙諸島問題を日々考えて生活している訳ではありません。

我々日本人だって同じですよね。
教育や受験、就職、日々の仕事、老後の心配、高齢化している両親などの事を考えて必死に生きながら、
時としてショッピングや旅行で気晴らしをしたいと考えて生きているのが、普通の暮らしだと思うのです。
中国の人たちも同じなんです。
改革開放以後、中国でも大都市にはアメリカ資本のFC店や、
日本資本のコンビニなどが多数進出し、街角の風景も日本と余り変わらない光景もあります。

生活の基本となる日常の買い物ですが、中国は基本的には市場で買い物をする人たちが多いです。
スーパーで買うよりも、基本は市場なんですね。

市場は様々な物によって別々に多数所在しています。
生鮮食料品市場、お花市場、茶葉市場、家電市場、生地市場、工具市場など、だいたいどこの都市にも点在しています。

まだまだパック入りの食材を購入するという文化はなじんでいません。
普通は500g単位という重量で物を買うのが習慣なんです。
近年高度経済成長を遂げた新興国家ですから、一般市民の経済力が上がってきているのは間違いありません。
ですから、子供の教育費をかけたり、住宅ローンを設定してマンションを購入したり、
自家用車を購入したり、海外旅行に行ったりすることが昔に比べて楽になって来ました。

それは経済が発展した結実です。
その部分だけを見ると、ようやく先進国並みの暮らしができる国になったのは事実なのですが、
一党独裁国家という政治体制は変わっていませんから、一見する発展した中国像と、
中に抱える不満のはけ口の無い中国像とは、
明確に開きが広がっているのです。
一党独裁で批判する政党が無く、自由に発言ができない国というのはどういう事なのか、
自由な日本人にはとてもわかりにくい事だと思います。

そこで、わかりやすい例をご紹介致します。

鉄道を例にしましょう。鉄道で旅をするとします。先ず駅に行きますね。
切符は駅の窓口でしか購入できません。IT化されたこの時代なのにです。
改札口は基本的に一つしかありません。

東京駅を想像して下さい。
線路の両側に丸の内口、八重洲口、そして南北中央、地下にも改札がありますよね。
基本的にどの駅にも改札は一つしかありません。
日本ならいつでも駅に入れますが、中国では列車が発車する数分前にならないと改札口は開きません。
列車は頻繁に遅れます。日本なら遅れの事実や原因や復旧の見通しなどが放送されますが、中国では遅れる事実しかわかりません。
列車は終点に着く前に車掌は掃除を開始します。
日本ならば終点で旅客が降りた後に清掃されますが、中国では旅客がいるのに到着前から清掃が開始されます。
これは中国の鉄道事情が悪いという説明をしているのではないのです。
事実なのですが、一番申し上げたい事は、クレームできないという事なんです。

日本であったら今書き述べた事を鉄道会社がしていたら、乗客は様々な窓口でクレームできますよね。
ところが、中国の乗客たちはみなじーっと黙っているのです。不思議な光景です。
それは言っても無駄だとわかっているからなんです。つまり物が言えないのです。
これは鉄道についてですが、社会のそこかしこにこういう現象があります。
文句を言っても聞いてくれない。又は文句を言えば言った者が処罰を受けるのです。
共産党が決めた事が全てで、エンドユーザーである一般市民に不都合があろうと、聞く耳を持たないのです。
これが一党独裁政治の実情です。

普通の中国人達は、こういう社会を耐えながら生活しているのです。
経済が発展したとはいえ、社会にはストレスが一杯なんです。
たまには日本に行って爆買いでもしたくなります。大きな声で話したくなります。
確かにマナーが悪いというか知らない中国人が多くいることも事実ですが、
ここにも背景があると筆者は思っています。
お茶や水墨画や書や古典音楽を培って来た国民に、マナーや道徳観が無いはずはありません。
筆者は毛沢東時代に行われた圧政である文化大革命が少なからず
現代中国人のマナーや道徳観の無さを作った要因としてあると考えています。
それまでの権威を破壊して自らの地位を確立しようと画策した愚行が10年も続きました。

その結果、旧来からある文化や風習までも壊された結果、
マナーや道徳観も破壊されてしまったと考えています。

ですから、中国の人たちは被害者なんだと筆者は考えています。
経済だけは発展しましたが、実情は本当にかわいそうなんです。

中国は大きな国ですから、民族や文化も地方によって大きく異なります。
それでも、長年中国に住んで仕事をした筆者には、中国の人たちは押しなべて優しい国民性だと感じました。
個性を重視する国民性なので、奥ゆかしい国日本人から見ると、凄く主張をする国民性に見えます。

最初はそれがとっつきにくいのですが、慣れてくると楽になって来ます。
それは隠し事なく何でも腹を割って話してくれるからなんです。
私はこう思う!とはっきりものを言ってくれるからなんです。
一方で奥ゆかしい国の日本人は、自らの主張を抑えて人と付き合おうとします。
どちらがわかりやすいかと言うと、中国の人の方がわかりやすい。
そして忌憚(きたん)なく話がしやすいと感じるのです。

中国の人たちは家族をとても大事にします。
社会保障が整っていないせいもありますが、
一人っ子政策を長年続けた結果、少子高齢化は日本よりも進んでいます。

ですから、高齢化した親族をどうやって面倒みていくのか、多くの中国の人たちの悩みが大きいところです。

ですが、家族をとても大事にする国民性があるので、
慎ましくも温かみを持って老齢化している親を家族で支えあって生きている様に見えます。

政治の側面だけで中国を判断すると、こうした市井の中国の人たちの暮らし振りが見えず、判断を間違います。
ですが、一般市民は皆一党独裁政治の不満に耐えながら、頑張って支えあって生きているのです。
普通の中国の人たちの暮らし振り、生活の一端をご紹介致しました。
中国の人たちに対する誤解が今まであったと感じて頂けると嬉しいです。